戦争体験は無力なのか ある政治記者の遺言
著者 石川 真澄、国正 武重 (編集)
政界記者ならぬ政治記者たらんとし,孤立を恐れず小選挙区制に反対し続けた著者は,また自然をこよなく愛するバードウォッチャーでもあった。新憲法の輝きを記憶する世代として,希望の見えにくい政治や社会と向き合い,がんと闘いながらつづられた痛憤と提言のメッセージは,同時代への憂いを共有する読者の心を揺さぶらずにはおかない。
石川真澄さんは,朝日新聞での政治担当の編集委員の頃,政治改革論議を通じて独自の論陣を張った。なかでも,1990年,海部俊樹内閣が政治改革のために「不退転の決意」で臨んだ「衆院への小選挙区比例代表制導入」をめぐって,石川さんは「死票を大量に生む結果を招く小選挙区制は民意を国会に反映できない」と,絶対反対の態度を貫いた。それは「政治改革」の名のもとの小選挙区導入が世論の大勢の中で,“孤立無援”に近い闘いでもあった。
岩波書店 (2005/8/5) 復刊
- 目次
- はじめに (国正武重)
- 序 「戦争体験」は無力なのか
I 昔の影が伸びてくる- 国旗・国歌法の公聴会を終えて
2000年の夢
これからどうなる
「バイパス政治」の果てに
あれは一体何だったのか
薄れゆく夏の日の対立
昔の影が伸びてくる
あれから半世紀がすぎて
「愛国心」っていったい何?
「戦争の話はしなかった」
ある社会党議員の思い出
日本語の乱れが国を滅ぼす
II いまの政治は腐っている- 自民党総裁選と民主党代表選
日本政治――この腐敗と逸脱をどうするか
新しい政治は生まれるか
小泉人気の正体
官僚は凡才だらけがいい
小泉人気と武蔵丸の気持ち
共産党は変われるか
あまりに陳腐な「宗男」「紘一」事件
エリート派閥が没落するとき
民主党のロゴの「ガタガタ」
III 選挙制度と政権交代- 住民投票はヒトラーを生む!?
「復活当選」禁止の怪
投票になんか来るんじゃなかった
政権交代を妨害した小選挙区制
「大都市部」とはどこか
公共事業は票になる?
米大統領選で露呈した衆院選の矛盾
参院選,投票率増減のしくみ
こうすればできる,格差是正
「2003年総選挙」をうらなう
総選挙で自民党は敗れるか
やっぱり「政権交代」は起こらない
巨大化した「保守支持」の果てに
IV 衰退するジャーナリズム- ジャーナリズムに希望はあるか
言論はこうして抑圧される
V 社民主義勢力不在の不幸- 自民・民主党の総裁・代表選でマスメディアが伝えるべきこと
英国地方都市に見習うべき核事故発生にそなえた覚悟
法律の実態を示してくれた企業・団体献金禁止の見送り
日の丸の蔑称“膏薬旗”にみる日中における歴史認識の格差
「政治改革」の完全な失敗を意味する小沢氏の政権離脱
首相の質が明確に分かれる「中曽根以前」と「竹下以後」
そごう問題の政策決定過程でまったく無力だった内閣と国会
社民主義勢力不在の不幸
ジャーナリスト石川真澄さんの素顔 (国正武重)
著者
石川真澄(いしかわ ますみ)
1933-2004年
1957年九州工業大学機械工学科卒業.朝日新聞社に入り,編集委員などを歴任したのち,新潟国際情報大学教授,桜美林大学大学院教授。
著書-『戦後政治構造史』(日本評論社),『日本の政治の今』(現代の理論社),『ある社会主義者』(朝日新聞社),『日本政治の透視図』(現代の理論社),『人物戦後政治』(岩波書店),『堕ちてゆく政治』(岩波書店),『戦後政治史 新版』(岩波新書)ほか。
編者
国正武重(くにまさ たけしげ)
1933年-2019年
1959年早稲田大学卒業.朝日新聞社に入り,編集委員などを歴任したのち,政治評論家として活躍。